執行猶予とは|条件・期間・取り消される場合を弁護士が解説

刑事事件の報道でよく耳にする「執行猶予」。ご家族が起訴されたとき、「執行猶予がつけば大丈夫なのか」「無罪と同じことなのか」というご質問をよくいただきます。

結論から申し上げると、執行猶予は有罪判決です。前科も付きます。ただし、直ちに刑務所に入ることはなく、これまでの生活を続けながら猶予期間を過ごすことができます。この記事では、執行猶予がどのような制度なのか、どのような場合に付くのか、取り消されるのはどんなときかを整理します。

目次

執行猶予とはどのような制度か

執行猶予とは、有罪判決で刑を言い渡しつつ、その刑の執行を一定期間待つ制度です。猶予期間を無事に過ごせば、刑を受けずに済みます。

たとえば「拘禁刑1年6か月、執行猶予3年」という判決であれば、判決の時点で刑務所に入ることはなく、3年間を問題なく過ごせば、その1年6か月の刑は執行されません。

無罪ではなく、前科は付く

ここは誤解の多いところです。執行猶予はあくまで有罪判決ですから、前科として記録に残ります。前科を避けたいのであれば、起訴される前の段階で不起訴を目指すことになります。

言い換えれば、執行猶予は「起訴されてしまった後の目標」です。起訴前と起訴後では、弁護活動の狙いどころが変わります。

対象になるのは3年以下の拘禁刑など

執行猶予を付けられるのは、言い渡す刑が3年以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金の場合です(刑法25条)。これより重い刑が相当と判断された事件では、そもそも執行猶予という選択肢が出てきません。

猶予の期間は1年以上5年以下の範囲で、裁判所が事件の内容に応じて定めます。

執行猶予が付くための条件

前科の有無

執行猶予の対象になるのは、原則として次のいずれかにあたる方です。

  • これまでに拘禁刑以上の刑に処せられたことがない
  • 過去に拘禁刑以上の刑を受けたことがあっても、その執行を終えた日などから5年以内に、拘禁刑以上の刑に処せられたことがない

初めての事件であれば、この要件は満たしていることがほとんどです。一方、実刑を終えて間もない時期の再犯では、要件そのものを満たさないことがあります。

「情状」として見られるもの

形式的な要件を満たしていても、それだけで執行猶予が付くわけではありません。裁判所は事件の内容と本人の事情を総合して判断します。実務上、次のような点が重視されます。

  • 被害の程度と、被害弁償・示談が済んでいるか
  • 被害者の処罰感情
  • 本人が事実を認め、反省しているか
  • 家族など、生活を監督する人がいるか
  • 職場や住まいが確保されているか
  • 再犯を防ぐための具体的な取り組み(通院、治療プログラム、環境の変更など)

これらは判決の直前に用意できるものではありません。起訴の前後から、時間をかけて積み上げていく必要があります。

保護観察が付く場合

執行猶予には、保護観察が付くものと付かないものがあります。保護観察が付いた場合、猶予期間中は保護司との定期的な面談があり、住居の変更などにも届出が必要になります。

負担は増えますが、監督があることを前提に猶予が認められる場面もあります。「保護観察が付いたから重い」と一概にはいえません。

猶予期間が満了するとどうなるか

猶予期間を取り消されることなく過ごすと、刑の言渡しは効力を失います(刑法27条)。言い渡された拘禁刑を受けることはなくなります。

ただし、有罪判決を受けたという事実そのものが消えるわけではありません。捜査機関の記録には残ります。この点は、前科と前歴の違いとあわせて理解しておく必要があります。

執行猶予が取り消される場合

猶予期間中に一定の事情が生じると、執行猶予は取り消されます。取消しには、必ず取り消されるものと、裁判所の裁量によるものがあります。

  • 必ず取り消される場合:猶予期間中に新たな罪を犯し、拘禁刑以上の実刑判決が確定したときなど
  • 裁量で取り消される場合:猶予期間中の罪について罰金に処せられたとき、保護観察付きの猶予で遵守事項に重ねて違反したときなど

取り消されると、猶予されていた刑が執行されます。新しい事件の刑と合わせて服役することになるため、負担は一気に重くなります。猶予期間中の再犯がとりわけ深刻に扱われるのはこのためです。

執行猶予を目指すためにできること

執行猶予は、判決の場で急に決まるものではありません。捜査の段階から積み上げてきたものが判断材料になります。

  1. 被害者との示談・被害弁償に早期に着手する
  2. 身元引受人を立て、監督の体制を書面で示す
  3. 職場や住まいを維持できるよう手を打つ
  4. 再犯防止のための具体的な取り組みを始め、その記録を残す

いずれも、身柄を拘束されたご本人が自分で進めることはできません。勾留が続いている間は外部との連絡も制限されます。弁護人が代わって動く必要があります。

なお、起訴された後に身柄の解放を求める手続きが保釈です。釈放されて生活を立て直せていることは、判決にも影響し得ます。

「一部執行猶予」という制度もある

刑の全部ではなく、一部の執行だけを猶予する制度もあります。たとえば「拘禁刑2年、うち6か月の執行を2年間猶予する」といった形です。一定期間は服役し、残りを社会内で過ごしながら立ち直りを図る仕組みで、薬物の自己使用事犯などで用いられています。

薬物事件の手続きについては薬物で逮捕されたらもあわせてご覧ください。

罰金にも執行猶予は付くのか

制度としては、50万円以下の罰金にも執行猶予を付けることができます。ただし実務で用いられる例は多くありません。罰金で済む事件では、そのまま納付して終わる形が一般的です。

なお、起訴の方法には正式な裁判のほかに略式手続があり、この場合は書面審理で罰金が言い渡されます。ご本人が内容に納得できない場合は、正式裁判を求めることができます。

よくいただくご質問

執行猶予がつけば、会社を辞めずに済みますか

服役しない以上、勤務を続けられる可能性は残ります。ただし就業規則や職種によって扱いは異なり、会社の判断次第という面があります。この点は逮捕は会社にバレる?解雇される?で整理しています。

2回目でも執行猶予は付きますか

猶予期間中の再犯について、再び執行猶予が付く制度自体はあります。ただし、言い渡される刑が1年以下であることや、特に酌量すべき事情があることなど、要件は厳しくなります。保護観察付きの猶予期間中は認められません。

起訴される前から準備できることはありますか

あります。むしろ起訴前のほうが選べる手は多く、示談が成立すれば起訴自体を回避できる可能性もあります。詳しくは家族が逮捕されたら最初の72時間をご覧ください。

ファストロイヤーができること

ファストロイヤーは、逮捕・勾留直後の初動に特化した緊急接見サービスです。ご連絡をいただいたら、弁護士が留置されている警察署へ向かい、ご本人と面会します。

  • 接見でご本人の話を聞き、取調べへの対応をお伝えする
  • 被害者との示談交渉を行う
  • 身元引受人の確保など、環境の整備を進める
  • ご家族へ、その時点で分かっている見通しをご説明する

受付は24時間365日、初回のご相談は無料です。対応エリアは東京都(島しょ部を除く全域)、神奈川県(横浜市・川崎市ほか)、埼玉県(さいたま市・川口市・所沢市ほか)、千葉県(市川市・船橋市・松戸市ほか)です。ご家族からのご依頼も承っています。

罪名別の解説:痴漢盗撮傷害窃盗飲酒運転薬物詐欺器物損壊住居侵入無銭飲食・無賃乗車公務執行妨害迷惑防止条例違反少年事件

ご依頼の前によくいただくご質問は「よくあるご質問」にまとめています。

ご依頼の費用については「弁護士費用の相場」で解説しています。初回相談は無料です。

緊急相談ダイヤル:050-1809-2174

監修:廣瀬太亮(東京弁護士会所属)

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