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逮捕された事実が自動的に勤務先へ通知される仕組みはありません。ただし知られてしまう経路はいくつかあり、身柄拘束が長引くほど可能性は高まります。ご本人の場合とご家族の場合に分けて、知られる経路と対処法、会社への伝え方まで弁護士が解説します。
「会社に知られてしまうのか」「解雇されるのか」——逮捕をめぐるご相談で、事件そのものと同じくらい多くいただく質問です。警察や検察が勤務先へ「逮捕しました」と連絡することはありません。問題になるのは、身柄拘束によって出社できない期間がどれだけ続くかと、その後の処分です。いずれも対応の速さで結果が変わります。
原則としてありません。捜査機関がご本人の勤務先に「逮捕しました」と通知する義務も慣行もありません。ただし例外として、捜査上の必要があれば勤務先に照会や捜索が入ることはあります。業務に関連する事件(業務上横領、会社の金銭に関わる詐欺など)では、勤務先が捜査の対象になるため、知られることは避けられません。
釈放されたご本人から「自分が逮捕されたことは会社に伝わるのか」というご相談も多くいただきます。考え方はご家族の場合と同じで、警察や検察が勤務先へ通知する仕組みはありません。ただしご本人の場合、次の点が加わります。
つまりご本人の場合も、身柄拘束が続くかどうかと、事件が公判まで進むかどうかで、勤務先に知られる可能性が大きく変わります。
つまり実務上、最大のリスクは「長期間の身柄拘束による無断欠勤」です。逆に言えば、早期に釈放されれば会社に知られずに済む可能性が高まります。
身柄拘束がどこまで続くかによって、勤務先への影響はまったく変わります。目安は次のとおりです。
| 身柄の状況 | 出社できない期間 | 勤務先への影響 |
|---|---|---|
| 逮捕のみで釈放 | 最大3日 | 有給休暇などの届出で収まることが多い |
| 勾留10日 | 約2週間 | 説明なしでは通らない。事情を伝える必要が出てくる |
| 勾留延長で計20日 | 約3〜4週間 | ほぼ確実に知られる。休職の相談が必要になる |
| 起訴後に保釈 | 保釈まで拘束が続く | 公判期日への対応も必要になる |
| 起訴後も勾留 | 判決まで数か月 | 就労の継続は困難 |
この表からわかるとおり、分かれ目は「勾留がつくかどうか」です。勾留は逮捕から72時間以内に決まります。この72時間の弁護活動が、勤務先に知られるかどうかを実質的に決めています。
ご家族が代わりに連絡する場合、虚偽の説明は避けるべきです。後に事実が判明したとき、事件そのものより「会社を欺いた」ことが懲戒事由として重く評価されるおそれがあります。
現実的な対応としては、まず「本人が数日出社できない」という事実だけを伝え、理由の詳細は改めて連絡する、という形にとどめる方法があります。嘘をつく必要はありませんし、つくべきでもありません。いつ・どこまで伝えるかは、釈放の見込みと処分の見通しによって変わります。見通しが立つまでは、確定していないことを断定的に伝えないことが大切です。
いいえ。逮捕された、というだけで直ちに解雇が有効になるわけではありません。日本の法律では解雇に厳しい制限があり、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です(労働契約法16条)。
就業規則に「起訴されたとき」「有罪判決を受けたとき」を懲戒事由と定める企業は多く、不起訴を獲得できるかどうかが、雇用を守るうえでも決定的になります。
解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です(労働契約法16条)。業務と無関係な私生活上の事件で不起訴となった場合、解雇が無効と判断される余地は相応にあります。
国家公務員法・地方公務員法により、禁錮以上の刑が確定すると欠格事由に該当し、失職します。執行猶予がついた場合も同じです。一方、罰金刑や不起訴であれば当然に失職するわけではありません。不起訴を得られるかどうかが、正社員以上に決定的になります。
免許の欠格事由が各業法に定められています。罰金以上で欠格となる資格もあり、業務停止や免許取消の対象になる場合があります。資格をお持ちの場合は、その旨を早い段階で弁護士にお伝えください。処分の見通しが、弁護方針そのものを左右します。
契約期間の途中で解除するには、正社員の解雇と同等かそれ以上に、やむを得ない事由が必要とされます(労働契約法17条)。ただし、次回の更新をしないという形での終了は起こりえます。
法律上の保護は正社員と変わりません。実務上は、シフトを外されるという形で影響が出ることが多くなります。
内定の取消も解雇に準じて扱われ、会社が自由にできるものではありません。ただし採用選考時に賞罰を申告する欄がある場合、受けた処分の内容によって扱いが変わるため、注意が必要です。
すでに勤務先の知るところとなっている場合でも、打てる手はあります。
逮捕は捜査の一段階であって、有罪が決まったわけではありません。不起訴になれば前科はつきません。この違いを正確に伝えるだけで、会社側の受け止め方が変わることがあります。
自主退職の形にされると、解雇の有効性を争う余地がなくなります。失業給付の扱いでも不利になります。署名を求められた場合は、持ち帰って弁護士に相談する旨をお伝えください。
多くの就業規則は、懲戒の前に弁明の機会を与えることを定めています。この手続きを欠いた懲戒処分は、無効と判断されることがあります。
不起訴処分告知書は、請求すれば検察庁から交付を受けられます。処分が確定した段階でこれを示すことで、すでに出された処分の見直しにつながる場合があります。
不起訴となった場合、賞罰欄に記載する必要はありません。賞罰欄の「罰」は一般に有罪判決を指すためです。
前科の情報を一般企業が照会する手段はありません。本籍地の市区町村と検察庁が管理しており、外部に開示されるものではありません。
労働できない期間の給与は原則として発生しません。有給休暇を充てることは可能です。傷病手当金は病気やけがが対象のため、身柄拘束による欠勤には使えません。
差し支えありません。ただし伝える範囲は慎重に決めてください。「数日出社できない」という事実だけを伝え、詳細は改めて連絡する、という形にとどめる方法があります。
いいえ。報道されるのは一部の事件に限られます。事案によっては、弁護人から実名報道を控えるよう申し入れることがあります。
逮捕の事実が自動的に会社に伝わることはありません。問題は身柄拘束の長さと、その後の処分です。早期釈放と不起訴を実現できれば、仕事を失わずに済む可能性は十分にあります。
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本記事の監修:ひろせ法律事務所 弁護士 廣瀬太亮(東京弁護士会所属)