名誉毀損・侮辱で逮捕されたら|ネット投稿と告訴の取消しを弁護士が解説

名誉毀損・侮辱で逮捕されたら|ネット投稿と告訴の取消し

「匿名のつもりだった」「みんな書いていた」。ネットへの書き込みが名誉毀損・侮辱として刑事事件になる場面が増えています。この類型には他の罪名と決定的に違う特徴があり、どちらも親告罪で、告訴が取り消されれば起訴できません。つまり相手方との話し合いがつけば終わらせられるのが原則です。ご本人・ご家族に向けて、罪名の分かれ方と、刑事になる前に動ける場面を整理します。

目次

名誉毀損と侮辱の違いは「事実を書いたかどうか」

分かれ目は、相手の社会的評価を下げる具体的な事実を示したかです。示していれば名誉毀損、評価や罵倒だけなら侮辱になります。

名誉毀損罪 侮辱罪
条文 刑法230条1項 刑法231条
成立するとき 公然と事実を示して人の社会的評価を下げた 公然と人を侮辱した(事実を示さない)
書き込みの例 「○○は不倫している」「前科がある」 「バカ」「気持ち悪い」
法定刑 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料
公訴時効 3年 3年
親告罪 はい はい

侮辱罪は2022年7月の改正で大きく重くなりました。それまでは拘留または科料だけでしたが、拘禁刑と罰金が加わり、公訴時効も1年から3年に延びています。「侮辱なら大したことにならない」という以前の感覚は、もう当てはまりません。

書いた内容が本当でも、名誉毀損は成立します

最も誤解されている点です。名誉毀損罪は示した事実が真実であっても成立します(刑法230条1項は「事実の有無にかかわらず」と定めています)。「嘘は書いていない」は、そのままでは反論になりません。

例外として、次の3つがすべてそろったときにかぎり罰せられません(刑法230条の2)。

  • 公共の利害に関する事実であること
  • 目的が専ら公益を図ることにあったこと
  • 示した事実が真実であると証明されたこと

個人的な恨みや仕返しの動機が混じっていると、2つめで外れます。この免責に乗れるかどうかは、書き込みの動機と前後の経緯から判断されますので、自己判断は危険です。

刑事になる前に、民事の開示手続きが先に来ます

ネット投稿の事案には、他の罪名にない特徴があります。いきなり警察が来るのではなく、まず民事の手続きで書き込んだ人を特定する作業が先行するのが通常です。

段階 起きること ご本人に届くもの
1 サイト運営者へ削除請求・開示請求 (まだ届かない)
2 発信者情報開示命令の申立て プロバイダからの意見照会書
3 氏名・住所が相手方に開示される 内容証明・損害賠償請求
4 刑事告訴 警察からの呼び出し、逮捕

プロバイダから「意見照会書」が届いた段階が、最も動きやすいタイミングです。この時点ではまだ刑事事件になっておらず、相手方と話がつけば、告訴そのものが起きずに終わる可能性があります。照会書を無視すると開示に同意したものとして進み、以後は選べる手段が減ります。

それでも逮捕される場合

この類型は在宅のまま進むことが多いのですが、次のような事情があると身柄を拘束されることがあります。

  • 投稿が長期間・多数にわたり、警告を受けても続けている
  • 相手が特定の個人で、執拗につきまとう形になっている(ストーカー規制法違反と併せて問題になることがあります)
  • 書き込みに害を加える内容が含まれ、脅迫・強要として扱われている
  • 呼び出しに応じない、連絡が取れない

逮捕された場合は勾留され、端末の解析や共犯関係の確認を理由に接見禁止がつくこともあります。複数のアカウントや端末が関係する事案では、取調べで聞かれる範囲が広くなります(取調べの受け方と黙秘権)。

親告罪であることが、そのまま解決の道筋になります

名誉毀損も侮辱も親告罪です(刑法232条1項)。告訴がなければ起訴できず、起訴される前に告訴が取り消されれば、そこで終わります。他の罪名では「被害届の取り下げだけでは終わらない」とご説明することが多いのですが、この類型は違います。

そのため示談の意味が非常に大きく、実務上は次を一度に整理します。

  • 投稿の削除と、今後書き込まない旨の約束——相手方が最も求めるのはここです
  • 慰謝料の額——投稿の内容・期間・拡散の程度で変わります
  • 告訴を取り消す旨の明記——これがないと刑事は終わりません
  • 民事の清算——開示にかかった弁護士費用を請求されることがあり、刑事の示談と切り離すと後から蒸し返されます

注意していただきたいのは、ご本人が直接連絡を取ろうとしないことです。謝罪のつもりでも、相手方には新たな接触と受け取られ、かえって不利に働きます。

ご家族ができること

できること 要点
弁護士に接見を依頼する 認める範囲と、投稿の特定作業を早い段階でご本人と固める
相手方への連絡は弁護人経由にする 直接の接触は再接触とみなされます
投稿を削除してよいか確認してから動く 証拠隠滅を疑われる場合があり、弁護人の判断を挟んでください
届いた書面を保管する 意見照会書・内容証明は、経緯を確認する出発点になります

よくあるご質問

Q. 匿名なら特定されませんか

特定されます。発信者情報開示の手続きが整備されており、サイト運営者とプロバイダをたどって氏名・住所まで至ります。「匿名だから大丈夫」という前提では考えないでください。

Q. 投稿を消せば終わりますか

削除は必要ですが、それだけでは終わりません。削除しても、すでに保存された画面の記録が証拠として残っています。告訴の取消しまで含めて整理する必要があります。

Q. 書いたことは事実です。それでも罪になりますか

なり得ます。名誉毀損罪は事実の有無にかかわらず成立し、免責されるのは公共性・公益目的・真実性の3つがそろう場合にかぎられます。

Q. リポスト(拡散)しただけでも問題になりますか

内容と態様によっては問題になり得ます。自分で書いていないから安全、とは言い切れません。具体的な投稿を拝見したうえでご説明します。

ファストロイヤーができること

ファストロイヤーは、逮捕・勾留直後の初動に特化した緊急接見サービスです。ご連絡をいただき次第、弁護士が警察署へ向かいご本人と面会します。この類型は、親告罪であるがゆえに相手方との交渉がそのまま結論になること、そして意見照会書が届いた段階なら刑事になる前に終われる可能性があることが特徴です。費用については「弁護士費用の相場」をご覧ください。

受付は24時間365日、初回のご相談は無料です。対応エリアは東京都(島しょ部を除く全域/多摩地域を含む)、神奈川県(横浜市・川崎市ほか)、埼玉県(さいたま市・川口市・所沢市ほか)、千葉県(市川市・船橋市・松戸市ほか)です。ご家族からのご依頼も承っています。

罪名別の解説:痴漢/盗撮/傷害/暴行/暴行と傷害の違い/窃盗/飲酒運転/薬物/詐欺/器物損壊/住居侵入/無銭飲食・無賃乗車/公務執行妨害/迷惑防止条例違反/恐喝・強要/横領/大麻の使用罪/外国人事件/ストーカー/交通事故/少年事件

本記事の監修:ひろせ法律事務所 弁護士 廣瀬太亮

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