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「起訴されました」とご連絡を受けた時点で、もう終わってしまったと受け止めるご家族がほとんどです。けれども手続きの上では逆で、起訴された日は、保釈を請求できる最初の日です。起訴される前の身柄拘束に、保釈という制度はありません。起訴によって決まるのは有罪かどうかではなく、ここから先を判断するのが検察官ではなく裁判所に変わる、ということです。
起訴の前と後では、同じ「勾留」でも中身が別のものになります。
| 起訴される前 | 起訴された後 | |
|---|---|---|
| 呼び方 | 被疑者としての勾留 | 被告人としての勾留 |
| 期間 | 原則10日、延長で最長20日 | 公訴提起の日から2か月 |
| 保釈 | 制度がありません | 請求できます |
| 判断する人 | 検察官(起訴するかどうか) | 裁判所(有罪かどうか、刑をどうするか) |
裁判所の統計では、令和5年に第一審で勾留された41,854人のうち、保釈された方は13,019人でした(保釈率31.1パーセント/裁判所「通常第一審における勾留、保釈人員及びその割合」)。起訴されたら出られない、という前提で考える必要はありません。
被告人としての勾留の期間は、刑事訴訟法60条2項が定めています。
| 内容 | 定め |
|---|---|
| 原則の期間 | 公訴の提起があった日から2か月 |
| 更新 | 必要があるときは1か月ごと |
| 更新の回数 | 原則1回限り |
| 回数の制限がない場合 | 89条1号・3号・4号・6号にあたるとき |
ここで出てくる89条は、次に説明する保釈の条文と同じものです。つまり、保釈が認められにくい事情と、勾留が延び続ける事情は、同じ条文の同じ号で決まっています。争点がどこにあるかを早く整理することが、そのまま身柄の問題につながります。
刑事訴訟法89条は「保釈の請求があったときは次の場合を除いては、これを許さなければならない」と定めています。原則は許可で、例外が各号に並んでいる、という作りです。
| 号 | 除外される場合 |
|---|---|
| 1号 | 死刑、無期または短期1年以上の拘禁刑にあたる罪を犯したものであるとき |
| 2号 | 以前に死刑、無期または長期10年を超える拘禁刑にあたる罪で有罪の宣告を受けたことがあるとき |
| 3号 | 常習として長期3年以上の拘禁刑にあたる罪を犯したものであるとき |
| 4号 | 罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき |
| 5号 | 被害者などに害を加え、または畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき |
| 6号 | 氏名または住居が分からないとき |
実務で山になるのは4号です。ただし、起訴の前後で意味合いが変わります。起訴の時点で検察官の手元には証拠が集まっており、公判で事実を争わない姿勢が示されれば、隠滅のおそれの評価は起訴前と同じではなくなります。取調べの段階で何をどう述べたかが、ここで効いてきます。
各号にあたる場合でも、裁判所が適当と認めれば保釈を許すことができます(90条の裁量保釈)。また、許可が出ただけでは外に出られません。保証金を納めて初めて釈放されます(93条)。金額は事案と資力に応じて決まり、逃亡したり約束を破ったりしなければ、手続きの終了後に戻る性質のお金です。身元引受人を誰にするか、どこに住むかを先に固めておくと、請求の準備が早く進みます。
最高裁判所が2025年7月に公表した第11回「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」によると、令和6年の地方裁判所の刑事通常第一審は次のとおりです。
| 項目 | 令和6年 |
|---|---|
| 受理から第1回公判期日まで | 平均2.0か月 |
| 第1回公判期日から終局まで | 平均1.9か月 |
| 全体の平均審理期間 | 3.9か月 |
| 事実を争わない事件 | 平均3.3か月 |
| 事実を争う事件 | 平均11.4か月 |
| 平均開廷回数 | 2.7回 |
審理期間の分布を見ると、3か月以内で終わる事件が64.4パーセント、3か月を超えて6か月以内が22.8パーセント、1年を超えるものは3.7パーセントでした。多くの事件は、起訴から2か月ほど待って1回か2回の法廷があり、その場で終わります。
期間が大きく変わる要因は2つあります。1つは事実を争うかどうかで、争う事件は平均11.4か月と3倍以上になります。もう1つは追起訴の有無で、追起訴のある事件は平均6.0か月、ない事件は3.2か月でした。追起訴がない事件では3か月以内に終わるものが75.2パーセントを占めるのに対し、追起訴がある事件では31.0パーセントにとどまります。再逮捕が続いている事件で見通しが立てにくいのは、この部分です。
初めて傍聴される方のために、1回の公判で何が起きるかを並べます。
| 段階 | 行われること |
|---|---|
| 冒頭手続 | 本人確認、検察官による起訴状の朗読、黙秘権の告知、被告人と弁護人の言い分の陳述 |
| 証拠調べ | 検察官の冒頭陳述、書面や物の取調べ、証人尋問、被告人質問 |
| 論告・求刑 | 検察官が意見を述べ、科すべき刑を述べます |
| 最終弁論 | 弁護人の意見、最後に被告人が述べる機会 |
| 判決の宣告 | 公開の法廷で言い渡されます |
見落とされやすい前提があります。裁判官は、起訴状しか見ていません。刑事訴訟法256条6項は、起訴状に裁判官の予断を生じさせるおそれのある書類を添えてはならないと定めています。捜査記録は、証拠調べの手続きで出されて初めて裁判官の目に入ります。だからこそ、こちら側が何を出すかで、法廷で見える事件の姿が変わります。
起訴されたから示談は意味がない、ということはありません。起訴前の示談は不起訴を目指すものですが、起訴後の示談は量刑に向けたものに変わります。目的が変わるだけで、やることは残っています。
| 用意するもの | 何に効くか |
|---|---|
| 示談、被害弁償 | 量刑。被害が回復されているかどうかは大きく見られます |
| 身元引受書、監督を約束する書面 | 保釈の判断と、執行猶予の判断 |
| 通院、治療、依存からの回復の記録 | 再び繰り返さない見込み |
| 勤務先の対応 | 生活の基盤が残るかどうか(会社への影響) |
| ご家族の上申書 | 釈放後に誰がどう支えるかの具体性 |
これらは、初公判の日までに形にしておく必要があります。接見禁止がついている間、ご本人は外と連絡が取れません。段取りを進められるのは、接見できる弁護人とご家族です。
判決は公開の法廷で言い渡されます。内容に不服があるときは、判決の日の翌日から14日以内に控訴を申し立てます(刑事訴訟法373条)。この期間は延びません。
注意が必要なのは、実刑の判決が言い渡された場合です。拘禁刑以上の刑を言い渡す判決の宣告があった後は、更新回数の制限(60条2項ただし書)と、原則として保釈を許さなければならないとする89条が適用されません(344条)。保釈されて自宅から通っていた方が、判決の日にそのまま収容されることがあります。判決の日に何を持っていくか、ご家族がどこで待つかまで決めておくのは、このためです。
Q.起訴されると、有罪は決まってしまうのですか。
決まりません。有罪かどうかを判断するのは裁判所で、その手続きがこれから始まります。一方で、検察官は起訴するかどうかを選べる立場にあり(不起訴という結論もあります)、起訴された事件の多くで有罪の判決が出ているのは事実です。だからこそ、争うのか、事実を認めたうえで刑を軽くすることに力を向けるのかを、早い段階で決める必要があります。
Q.保釈の保証金はいくらですか。
事案の内容と資力に応じて裁判所が決めるため、一律の額はありません。逃亡したり条件に違反したりしなければ、手続きの終了後に返還される性質のお金です。ご用意できる上限を先に把握しておくと、請求の時期を決めやすくなります。
Q.罰金で終わる場合も、法廷に行くのですか。
行かない場合があります。本人が同意していれば、書面の審理だけで罰金を言い渡す手続きがあります(略式起訴)。ただし、これも有罪の判断であり、前科は残ります。
Q.国選弁護人がついています。そのままでよいですか。
令和6年の刑事通常第一審では、弁護人がついた割合が99.3パーセント、うち国選が85.0パーセント、私選が17.2パーセントでした(合計が100を超えるのは、途中で切り替わった事件が両方に数えられるためです)。選び直すことも、併せて依頼することもできます。判断の材料は、費用と、公判までに動ける時間です。
起訴の日から初公判までには、平均して2か月あります。この間に、保釈を請求するか、示談をどう進めるか、勤務先にどう説明するかが決まります。何もしなくても日程は進みますが、何を出したかで結論は変わります。起訴の知らせを受けた日が、準備を始められる最初の日です。
ファストロイヤーは、逮捕直後の接見に24時間365日対応しています。対応エリアは東京都(島しょ部を除く全域/多摩地域を含む)、神奈川県(横浜市・川崎市ほか)、埼玉県(さいたま市・川口市・所沢市ほか)、千葉県(市川市・船橋市・松戸市ほか)です。ご家族からのご依頼も承っています。
手続きの解説:逮捕直後の72時間/勾留/釈放までの流れ/再逮捕/保釈/書類送検/差し入れ/少年事件/外国人事件
罪名別の解説:痴漢/盗撮/傷害/暴行/暴行と傷害の違い/窃盗/飲酒運転/薬物/詐欺/器物損壊/住居侵入/無銭飲食・無賃乗車/公務執行妨害/迷惑防止条例違反/恐喝・強要/横領/名誉毀損・侮辱/大麻の使用罪/外国人事件/ストーカー/交通事故/少年事件
本記事の監修:ひろせ法律事務所 弁護士 廣瀬太亮