暴行罪と傷害罪の違い|ケガの有無で何が変わるのかを弁護士が解説

「殴ってしまったが、相手にケガはない」「胸ぐらをつかんだだけなのに、後から診断書が出たらしい」。暴行罪と傷害罪は、行為そのものではなく結果としてケガが生じたかどうかで分かれます。この一点で、法定刑も、手続きの重さも、示談の相場も変わります。この記事では両者の違いを整理し、ご家族が今どちらの可能性を見ておくべきかを説明します。

目次

違いは「ケガの有無」の一点

暴行罪 傷害罪
条文 刑法208条 刑法204条
成立するとき 暴行を加えたが、傷害には至らなかった 人の身体を傷害した
法定刑 2年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、拘留または科料 15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
公訴時効 3年 10年
告訴の要否 不要(非親告罪) 不要(非親告罪)

法定刑の幅がまったく違います。暴行罪の上限は2年、傷害罪の上限は15年です。同じ「殴った」という行為でも、相手がケガをしたかどうかで、見通しの立て方が変わります。

「傷害」は、目に見えるケガだけではありません

傷害というと、切り傷や骨折を思い浮かべる方が多いと思います。しかし裁判例は、人の生理的な機能に障害を与えることを広く傷害としてきました。次のようなものも傷害にあたり得ます。

  • めまい、吐き気、失神
  • 睡眠障害
  • 精神的な不調(PTSDなど)
  • 髪を切る行為(判断が分かれる類型です)

「あざができた程度」と思っていても、診断書に全治何日と書かれれば傷害として扱われます。相手が病院へ行ったかどうかで、その後の展開が変わります。

ケガをさせるつもりがなくても、傷害罪になります

ここが誤解されやすい点です。「ケガをさせるつもりはなかった」という主張は、傷害罪の成立自体は否定しません。暴行を加えるつもりがあり、その結果としてケガが生じた場合、傷害罪が成立するというのが確立した考え方です。

つまり、暴行罪と傷害罪の分かれ目は、本人の意図ではなく、結果として生じたものにあります。「軽く押しただけ」でも、相手が転倒して骨折すれば傷害罪です。

「暴行」は殴る・蹴るに限りません

暴行罪の「暴行」も、思われているより広い概念です。相手の身体に直接触れていない行為でも対象になり得ます。

  • 胸ぐらをつかむ、腕を強く引く
  • 物を投げつける(当たらなかった場合も含み得ます)
  • 水や液体をかける
  • 至近距離で大声を出し続ける、耳元で音を鳴らす

個別の事情により判断は変わりますので、「触れていないから暴行ではない」と自己判断はなさらないでください。詳しくは暴行罪で逮捕されたらをご覧ください。

罪名は、途中で変わることがあります

実務でよくあるのが、当初は暴行罪として扱われていたものが、後から提出された診断書によって傷害罪に切り替わるという流れです。逆に、診断書が出なかったため傷害から暴行に落ち着くこともあります。

そのため、逮捕直後の段階で「暴行だから軽い」と考えるのは危険です。相手がまだ通院を続けている間は、罪名が確定していないとお考えください。手続きの進み方は逮捕から72時間と勾留で解説しています。

どちらも、被害届の取り下げだけでは終わりません

暴行罪も傷害罪も親告罪ではありません。告訴がなくても起訴できますし、被害届が取り下げられたから事件が消える、というものでもありません。親告罪である器物損壊との違いです。

もっとも、相手方が処罰を望まない意思を示していることは、検察官の判断で重く働きます。不起訴につながる場面は実際にあります。

示談の進め方は同じ、金額の考え方は違う

どちらの罪名でも、示談を弁護人経由で進めるという点は変わりません。ご本人やご家族が直接連絡を取ると、証拠隠滅や口裏合わせを疑われ、勾留や接見禁止の理由にされかねないためです。

違うのは金額の考え方です。傷害の場合は治療費・通院交通費・休業損害といった実費が積み上がるため、暴行にとどまる場合より高額になるのが通常です。進め方は示談で解説しています。

逮捕されるかどうかは、罪名では決まりません

「傷害だから逮捕、暴行なら在宅」という決まりはありません。判断されるのは、逃げるおそれと証拠を隠すおそれです。身元が明らかで、相手方と接触するおそれがなければ、傷害でも在宅のまま進むことがあります。考え方は逮捕と書類送検の違いをご覧ください。

逆に、暴行であっても相手方と近い関係にある、職場が同じといった事情があれば、身柄が拘束されることはあります。

よくあるご質問

Q. 相手が診断書を出さなければ暴行罪ですか

診断書がなければ傷害の立証は難しくなりますので、結果として暴行罪で処理されることはあります。ただし、提出の期限が決まっているわけではありません。

Q. 全治1週間でも傷害罪になりますか

なります。傷害罪に軽重の区分はなく、程度は量刑で考慮されます。

Q. けんか両成敗にはなりませんか

刑事手続きに「両成敗」という扱いはありません。双方が立件されることも、一方のみが立件されることもあります。正当防衛の主張は傷害罪で逮捕されたらで触れています。

Q. 前科はつきますか

罰金であっても有罪であれば前科です。不起訴なら前科はつきません。整理は前科と前歴の違いをご覧ください。

ファストロイヤーができること

ファストロイヤーは、逮捕・勾留直後の初動に特化した緊急接見サービスです。ご連絡をいただき次第、弁護士が警察署へ向かいご本人と面会します。この類型は、罪名がまだ動く段階で、相手方への連絡を弁護人経由に切り替えられるかどうかが結果を大きく左右します。

受付は24時間365日です。対応エリアは東京都(島しょ部を除く全域)、神奈川県(横浜市・川崎市ほか)、埼玉県(さいたま市・川口市・所沢市ほか)、千葉県(市川市・船橋市・松戸市ほか)です。ご家族からのご依頼も承っています。

罪名別の解説:痴漢/盗撮/傷害/暴行/窃盗/飲酒運転/薬物/詐欺/器物損壊/住居侵入/無銭飲食・無賃乗車/公務執行妨害/迷惑防止条例違反/恐喝・強要/横領/名誉毀損・侮辱/大麻の使用罪/外国人事件/ストーカー/交通事故/少年事件

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