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「会社のお金を立て替えのつもりで使ってしまった」「集金した現金を一時的に流用した」。横領は、はじめから盗るつもりはなかったという方が大半の類型です。そして、結論を最も大きく左右するのは弁済ができるかどうかという、他の罪名とは少し違った構造を持っています。ご本人・ご家族に向けて、罪名の分かれ方と、弁済と示談の進め方を整理します。
同じ「横領」でも、その物をどういう立場で預かっていたかによって、刑の重さが大きく変わります。
| 単純横領罪 | 業務上横領罪 | 遺失物等横領罪 | |
|---|---|---|---|
| 条文 | 刑法252条 | 刑法253条 | 刑法254条 |
| 成立するとき | 他人から預かっている物を自分のものとして処分した | 仕事として反復・継続的に預かる立場で同じことをした | 落とし物など、誰の占有にもない物を自分のものにした |
| 法定刑 | 5年以下の拘禁刑 | 10年以下の拘禁刑 | 1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金・科料 |
| 公訴時効 | 5年 | 7年 | 3年 |
| 罰金刑 | なし | なし | あり |
経理担当者、営業の集金、店舗の売上管理、士業や管理会社による預り金——こうした職務として金品を預かる立場にある方は、同じ行為でも業務上横領罪となり、上限が10年に跳ね上がります。
捜査の初期に罪名が動きやすい類型ですので、境目を押さえておく意味があります。
たとえば、回収した売掛金をそのまま持ち出せば横領、不当に安い条件で融資や取引を決裁して会社に損害を与えれば背任、という切り分けになります。会社役員の場合は会社法の特別背任罪(10年以下の拘禁刑・1000万円以下の罰金/併科あり)が問題になることがあります。
ここは誤解されがちな点です。業務上横領罪には罰金刑の定めがないため、「罰金を払って終わり」という決着は制度上ありません。
終局的な処分は、不起訴か、起訴されたうえでの執行猶予か実刑か、という三択になります。略式起訴による罰金という逃げ道がないぶん、不起訴を取りにいけるかどうかの意味が、他の罪名より重いと考えてください。
この類型の核心です。被害が金銭で、金額がはっきりしているため、被害の回復が「できたか・できないか」で白黒がつきます。暴力事件のように「気持ちの問題」で折り合う余地が小さいぶん、弁済の有無がそのまま評価になります。
実務上、押さえておきたいのは次の点です。
横領は、いきなり逮捕されるより、社内で発覚し、調査・聞き取りを経てから刑事に進む経過をたどることが多い類型です。つまり、刑事事件になる前に動ける時間が残されていることがあります。
この段階での対応は、後の手続きをそのまま決めてしまいます。社内のヒアリングで署名した書面は、そのまま捜査の資料になります。記憶があいまいなまま総額を認める書面にサインしてしまい、後で訂正できずに苦しむ例が多くあります(取調べの受け方と黙秘権)。
一方で、次のような事情があると身柄が拘束されやすくなります。
逮捕された場合は勾留され、関係者が多い事件では接見禁止がつくこともあります。在宅のまま進んでいる場合でも、処分が軽くなると決まったわけではありません。
同じ一つの出来事でも、進む手続きは3つに分かれます。
| 手続き | 決めるもの | 弁済の影響 |
|---|---|---|
| 刑事 | 起訴するか、刑をどうするか | 大きい(不起訴・執行猶予の可能性) |
| 民事 | 損害賠償・不当利得の返還 | 弁済すれば消える |
| 懲戒 | 解雇の可否・退職金の扱い | 限定的(不起訴でも解雇は残り得る) |
不起訴になっても、懲戒解雇そのものが取り消されるわけではありません。勤務先への影響については「逮捕は会社にバレる?」でも解説しています。もっとも、前科を避けられるかどうかは、その後の人生の選択肢に直接関わります。
親の預金を管理していた、同居の家族の年金を扱っていたという場面もあります。横領罪には親族間の特例(刑法244条)が準用されますが、判例は物の所有者と、預けた委託者の双方との間に親族関係が必要としており、適用される場面は限られます。施設や後見の関係が絡むと、特例は働きません。自己判断せずご相談ください。
| できること | 要点 |
|---|---|
| 弁護士に接見を依頼する | 認める範囲と弁済方針を、早い段階でご本人と固める |
| 弁済の原資を検討する | いくらまで、いつまでに用意できるかを具体的に出す |
| 会社への連絡は弁護人経由にする | 直接の謝罪は、口裏合わせを疑われる原因になります |
| 資料を保全する | 立替えの領収書・承認のやりとりは、金額を争う根拠になります |
必ずそうなるとは申し上げられません。金額・期間・手口・勤務先の意向など、複数の事情から判断されます。もっとも、全額の弁済と宥恕が得られているかどうかは、検察官の判断で重く扱われる事情です。
内容を書面にしておく必要があります。口頭の約束のまま返済だけ進み、後から告訴された例があります。返済の条件、告訴しない旨、民事の清算まで含めて一度に整理してください。
一概には申し上げられませんが、発覚してから動くより、選べる手段が多く残っているのは確かです。弁済の準備と伝え方を設計したうえで切り出すかどうか、事前にご相談ください。
ご本人やご家族から直接連絡を取るのは避けてください。弁護人が選任されていれば、弁護人から会社の担当者や代理人に連絡し、弁済と示談の窓口を作ることができます。
ファストロイヤーは、逮捕・勾留直後の初動に特化した緊急接見サービスです。ご連絡をいただき次第、弁護士が警察署へ向かいご本人と面会します。この類型は、認める範囲を最初にどう固めるか、そして弁済の原資と窓口を早く作れるかで結論が動きます。費用については「弁護士費用の相場」をご覧ください。
受付は24時間365日、初回のご相談は無料です。対応エリアは東京都(島しょ部を除く全域/多摩地域を含む)、神奈川県(横浜市・川崎市ほか)、埼玉県(さいたま市・川口市・所沢市ほか)、千葉県(市川市・船橋市・松戸市ほか)です。ご家族からのご依頼も承っています。
罪名別の解説:痴漢/盗撮/傷害/暴行/暴行と傷害の違い/窃盗/飲酒運転/薬物/詐欺/器物損壊/住居侵入/無銭飲食・無賃乗車/公務執行妨害/迷惑防止条例違反/恐喝・強要/名誉毀損・侮辱/大麻の使用罪/外国人事件/ストーカー/交通事故/少年事件
本記事の監修:ひろせ法律事務所 弁護士 廣瀬太亮