交通事故で逮捕されたら|人身事故・ひき逃げの処分と免許の行政処分

交通事故は、起こそうと思って起こすものではありません。それでも、人にケガをさせてしまえば刑事事件になり得ます。もっとも、人身事故のすべてで逮捕されるわけではなく、多くは在宅のまま捜査が進みます。逮捕されるかどうかを分ける事情と、事故のあとに何が並行して進むのかを整理します。

目次

事故で問われる罪

人身事故では、自動車運転処罰法(正式には「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」)と道路交通法の両方が関わります。

罪名 どのような場合か 法定刑
過失運転致死傷罪 不注意により人を死傷させた場合。人身事故の多くがこれにあたる 7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
危険運転致死傷罪 制御困難な高速度、あおり運転、信号無視の暴走など、類型が法律で定められている 負傷は15年以下の拘禁刑、死亡は1年以上の有期拘禁刑
救護義務違反(ひき逃げ) 人を死傷させたのに救護せずその場を離れた場合 10年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
報告義務違反 事故を警察に届け出なかった場合。物損だけでも対象 3月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金

なお、物が壊れただけの事故(物損事故)には、原則として刑事罰がありません。過失による器物損壊は処罰の対象外だからです。ただし届け出をせずに立ち去れば、報告義務違反という別の問題になります。わざと壊した場合は器物損壊です。

逮捕される事故と、されない事故

身元が分かっていて、逃げるおそれも証拠を隠すおそれもなければ、身柄を拘束する必要はありません。現場に留まり、警察に届け出て、身元を明らかにしていれば、その日のうちに帰宅でき、後日呼び出しを受けて捜査が進む形(在宅事件)が通常です。考え方は逮捕と書類送検の違いをご覧ください。

一方、次のような事情があると逮捕に至りやすくなります。

  • 現場から立ち去った(ひき逃げ・当て逃げと判断された)
  • 被害者が亡くなった、または重い後遺症が残る見込みである
  • 飲酒・薬物の影響が疑われる
  • 無免許であった、または身元を確認できる資料がない
  • 危険運転にあたる走り方だったと疑われている

逮捕された場合は、検察官への送致まで48時間、勾留請求の判断までを含めて72時間という流れで進みます。詳しくは逮捕から72時間と勾留をご覧ください。

保険会社の示談と、刑事の示談は別のものです

この類型でもっとも誤解が多いのがこの点です。任意保険会社が進める示談は、治療費や慰謝料といった損害賠償の話であって、刑事処分を軽くするためのものではありません。保険で賠償が済んでいても、被害者の方が処罰を望んでいれば、その意思は検察官の判断にそのまま反映されます。

刑事の場面で意味を持つのは、被害者の方が「処罰を望まない」という意思を示しているかどうかです。そのための謝罪や話し合いは、保険会社の示談とは別に進める必要があります。進め方は示談で解説しています。不起訴や執行猶予の判断に関わる部分です。

ひき逃げは「逃げたつもりがなくても」成立し得ます

救護義務違反は、逃げようという意図があった場合だけの話ではありません。実際には、次のような場面で問題になります。

  • 相手が「大丈夫です」と言ったので、連絡先だけ交換して別れた
  • 接触した感覚がなく、そのまま走り去ってしまった
  • いったん停まったが、通報せずに現場を離れた
  • 自分が先に病院へ向かった

人身事故では、救護と警察への報告の両方が運転者の義務とされています。相手の申し出があっても、警察への届け出を省くことはできません。後から「逃げた」と評価されると、処分の重さが大きく変わります。

免許の行政処分は、刑事とは別に進みます

刑事処分(罰金や裁判)と、免許の停止・取消といった行政処分は、別の手続きです。刑事で不起訴になっても、免許の処分がなくなるわけではありません。逆に、行政処分が先に決まることもあります。

点数は、事故の重さや不注意の程度に応じて加算されます。ひき逃げは付加点数が大きく、一度で免許取消となり、再取得までの欠格期間も長くなります。行政処分の前には意見の聴取(聴聞)の機会があり、ここで述べたことも結論に影響します。飲酒を伴う場合の扱いは飲酒運転で逮捕されたらで詳しく扱っています。

事故の直後にしてはいけないこと

救護と通報を済ませたうえで、次の点にご注意ください。

  • 現場を離れない。これがもっとも重要です
  • その場で賠償の約束をしない。ケガの程度が後から変わることがあります
  • ドライブレコーダーの記録を消さない。自分に不利に見える映像でも、消せば別の問題になります
  • 記憶と違う内容の調書に署名しない。考え方は取調べの受け方と黙秘権をご覧ください

事故の状況は、双方の記憶が食い違うことが多いものです。信号の色、速度、相手の動きについて、断定できないことを断定して述べる必要はありません。

ご家族ができること

場面 できること
逮捕の連絡を受けたとき どこの警察署にいるか、いつ・どのような事故かを確認する
すぐに 弁護士に接見を依頼する。逮捕直後72時間はご家族は面会できません
保険の手続き 任意保険会社へ事故の報告をする。刑事とは別に進みます
職場への対応 欠勤の伝え方は逮捕は会社にバレる?を参照
差し入れ 持ち込めるものに決まりがあります(差し入れできるもの)

よくあるご質問

Q. 相手のケガが軽ければ処罰されませんか

軽い場合には、情状により刑が免除されることがあります。もっとも、免除されるかどうかは結果の重さだけで決まるものではなく、不注意の程度や事故後の対応も見られます。

Q. 保険で全額払えば不起訴になりますか

賠償が済んでいることは有利な事情ですが、それだけで決まるものではありません。被害者の方の処罰感情が別に考慮されます。

Q. 逮捕されなければ前科はつきませんか

逮捕の有無と前科は関係ありません。在宅のまま罰金となれば前科になります。違いは前科と前歴の違いで整理しています。

Q. あとから「ひき逃げ」として連絡が来ました

接触に気づかなかったという認識が争点になります。走行状況や車両の損傷から検討しますので、自己判断で説明する前にご相談ください。

ファストロイヤーができること

ファストロイヤーは、逮捕・勾留直後の初動に特化した緊急接見サービスです。ご連絡をいただき次第、弁護士が警察署へ向かいご本人と面会します。この類型は、事故直後の説明の仕方と、保険とは別に刑事の示談へ動けるかどうかが結果を左右します。

受付は24時間365日です。対応エリアは東京都(島しょ部を除く全域)、神奈川県(横浜市・川崎市ほか)、埼玉県(さいたま市・川口市・所沢市ほか)、千葉県(市川市・船橋市・松戸市ほか)です。ご家族からのご依頼も承っています。

罪名別の解説:痴漢/盗撮/傷害/暴行/窃盗/飲酒運転/薬物/詐欺/器物損壊/住居侵入/無銭飲食・無賃乗車/公務執行妨害/迷惑防止条例違反/恐喝・強要/横領/名誉毀損・侮辱/大麻の使用罪/外国人事件/ストーカー/少年事件

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